「世界が全てソースコードに見えた」ポケモンGOの先駆者が描く未来図(前)

 

「世の中すべてソースコードで出来上がってるんだなっていうビジョンが浮かんだんです。」

インターネットやソーシャルメディアが登場するずっと前の1990年代から、先進的なプロダクトを次々と生み出してきた、井口尊仁さん。

驚くことに、ポケモンGOが登場する8年も前にAR技術を使ったアプリ「セカイカメラ」を開発していた。

彼はなぜ、そこまで未来に先駆けているのか?彼が見ているソースコードの世界とは?

拠点の1つである京都でWhyメディアが取材をしてきました。

1990年に「動く漫画」を開発

ーまず井口さんの経歴について教えていただけますか?

元々、80年代からマルチメディア、当時のCD-ROMの制作とか、3Dゲームの開発とかプロデューサー的な仕事をしていました。

ー当時から起業されてたんですか?

いえ、そのときはサラリーマンでした。

97年くらいから、ジャストシステムという会社で「マンガトロン」というデジタルコミックのプラットフォームの開発をしていました。

ーデジタルコミックですか!

今でも結構斬新だと思うんですけど。笑

簡単にだれでもデジタルコミックが作れるっていうプラットホームを開発したんですよ。

漫画のコマとセリフとサウンドをドラッグ&ドロップすると、だんだん色が表情についていくとか。コマの中でキャラクターが魅力的に動いていくという。

ー漫画とアニメの中間という感じでしょうか。魔法の世界みたいですね!

そう。コンピュータのディスプレイで漫画を読む体験って、まだそんなにポピュラーじゃなかったんですが、

世界に向けて日本のコミックをデジタライズして、普及させるためのプラットホームを作りたかったんです。

漫画のクリエーターがさくっと作れるものを作りたかった。要するに、絵をかいて、スキャンして、ドラッグ&ドロップをすると、もうすぐにアニメーションがつけれるみたいな。

その動く漫画の編集ツールっていうのを、個人のクリエーターに提供したかったんです。

ジャストシステムって当時すごく力があったので、海外でも一生懸命進出をしてたし、先駆的な商品開発やってたんで、当時、サラリーマンなんだけど、社長口説いて、やったんですよ。

作品が作れる環境を作りながら、自分も作品を作りました。

そしたら、パルコのアーバナートっていう、現代アートのアワードがあるんですけど、たまたまグランプリを取りました。

ーすごい!その事業はうまくいってたんですか?

いえ、当時完成したのが1990年だったんですけど、ちょっと早すぎたのかな。部署が丸ごとなくなってしまって、100人規模のプロジェクトチームが全員リストラされてしまいました。

mixiよりも前にブログプラットフォームをしていた

ーその後はどんなビジネスを?

その後は、チビッキという、ブログのプラットフォームをスタートアップでやりました。

ちび日記で、チビッキ。

ーブログのプラットフォームというとアメブロみたいな?

そうですね。これ、1999年に開発を始めたのですが、当時はブログという概念がまだほとんど日本になかった頃。mixiやアメブロもなかったです。

日本でブログがすごく使われるようになったのって、2004年から2005年ごろだったので、かなり早かったですね。

チビッキは、みんなが日記が書けて、日記を見た人がファンになれて、コンテンツをシェアできて。チャットやコミュニケーションもできる。

漫画の配信システムとかも中に入っていて、日替わり漫画がインラインで配信されるんですよ。

ーまさに今でいう、ソーシャルメディアに近いですね。

はい。これを1999年から開発を始めて、2001年から本格的に普及に向けて一生懸命頑張ったんですけど、ちゃんと拡張できなかったんですよね。でも、その間にはてなさんとかmixiさんとかがどんどん伸びて、すごく悔しかったんですよ。

もしかしたら早すぎたのかもしれない。ビジョンが先に行き過ぎていて、普及するための現実路線っていうのが十分にできなかったんですよね。システムはよくできたと思います。

それを始めたころは、個人のコンテンツが世界中で当たり前にネットワーキングされて、それがメディアの主流になるんだと確信して、これを始めたんだけど。

でも始めたころは、まだインターネットとか、デジタルメディアとか、インターネットとかエンターテイメントとかが、まだインターネットとコミュニケーションの主役にはなってなかったので、誰もそれを理解してくれなかったんですよ。

それで、その後は、「セカイカメラ」という、スマートフォンで空間をのぞきこむとあらゆるものがデジタルのタグ情報になって現れるアプリを作りました。その空間に貼り付けられたデジタルのタグの情報を誰もが覗けるし、書けるし、コメントもできるし、保存もできるというものです。これが僕の人生の転機でした。

ポケモンGOの先駆け「セカイカメラ」

ーそれが何年前ですか?

10年前。2008年頃です。

2008年にサンフランシスコのテッククランチフィフティーという大きいコンテストで発表することが出来て、ものすごく話題になりました。

翌年2009年に製品を公開するんですけど、結果的にはすぐに全世界で300万ダウンロードされました。

ー2009年頃に300万ダウンロードってすごいですね。

そうですね、当時はmixiが廃れ始めて、Twitterとかが流行り始めて、Facebookとかがもう少ししたら来る感じ。インスタはまだ始まったばっかりじゃないかな。

ーTwitterが流行る前にそんな先進的なアプリを作っていたなんて。

セカイカメラは、Twitterのもっとビジュアル重視バージョンというか、ある空間で端末をかざすと、情報がぷかっと浮かんでくるんですよ。

demo動画:

ーポケモンGOみたいな感じですか?

ポケモンGOとはすごく似ています。仕組みは基本的に同じです。

世界を可視化できると面白いよねっていう。例えば、簡単にいうと富士山があったときに、富士山っていうタグが出た方がわかりやすいじゃないですか。

テキストだけじゃなくて、写真や音楽を貼ることもできます。

観光スポットとかでも、個人の思い出とか、歴史的な背景とかいろんな情報を誰でも貼れて閲覧できます。

ーじゃあ、そこの歴史がわかるわけですね!

そう。空間に「記憶がどんどん蓄積」できるわけ。

ーそれをポケモンGOが登場する8年も前に開発していたって半端ないですね。

はい。その後、2013年にTelephasyを創業して、個人が見たものを直接他人と共感できるっている、要するにグーグルグラスみたいなウェアラブルのデバイスを開発しました。

世界はソースコードだ

ー本当に次々と、先進的なプロダクトを創られていて、何かその原体験みたいなものはあるのでしょうか?

原体験は、大学生時代にあります。僕、立命館大学の哲学科の学生だったんですよ。ニーチェとかやってました。

で、ニーチェに限界を感じて、インド哲学とかにいって、虚無論とか悲観主義とか、そういうところまでやって少し頭おかしくなりそうになって。。笑

でも結局、哲学ってつまんないってなったんですよね。文献のこのページのこの行はこういうことだ、って解釈をするって本質的じゃないなと思ってしまって。

そんな時に、たまたま隣に理系の友達がいて、その子に教えてもらったコンピューターのプログラミングにめちゃくちゃハマったの。

ーその当時は、パソコンはないですよね?

なかったです!ポケコンって知ってます?当時のパソコン。

ネットワークもクラウドもOfficeもマウスもない、プログラミングしかできないんだよね。

だから、自分でワープロ作ってもいいわけで、RPGを作ってもいいわけですよ。

自分はオートバイが好きだったんで、オートバイのレースのゲームを作っていたり、ダンジョンゲームを自分で作ったり。

あと、俳句を自動生成するプログラムとか。笑

あ、あとね、自分の気持ちを言葉で伝えると、CGなんだけど、それを踊りで表現してくれるみたいなツールとか。

そんなのを、ずーっと作り続けてて、何がすごいと思ったかというと、自分の思ってることをソースコードで全て表現できるなって。

ー言葉で表現するよりも強力ですね。

そう。素晴らしいよ!自分が考えてる世界観を動作するものとして他人に渡せるし、その人もソースコードを書き換えればいくらでもその編集に参加できるじゃないですか。

だから、そういうことができるコードの世界って「ヤバイ・・・!」と思って、コードを書きすぎて頭がおかしくなっちゃって。

20歳の時、よく覚えてるんだけど、ある日の朝、ツーリングに行こうと思って、オートバイに乗って、寮のドアあけたらバーッて光が差し込んできて、頭にスイッチが鳴った音がしたんですよ。「カチッ」って。

で、世の中すべてソースコードで出来上がってるんだなっていうビジョンが浮かんだんです。

本も契約書も、あるいはその人間の思考とかキャリアとか価値観とか、大学とか会社とか、地域とか歴史とかなんでも。全てがコードで書かれてるっていうビジョン。

アイデアとか脳内妄想みたいなところから、なんかプロダクトを作ろうというイメージの源泉ってそこだと思います。

ーその原体験が、次々とプロダクトを生み出すということにつながっているんですね。

「こういうのを作ろうか」みたいなのって、僕にとってはすごく自然なことなんです。

人間がお互いにイメージとか思考とか知識とか知恵を可視化して共有して、一緒に編集・編纂して作っていけるって、文明社会のありようじゃないですか。人間の歴史ってそういう部分ありませんか?

例えば、石板にしろ、土器にしろ、お互いの知識とか知恵とか感情とかをいかに外部化して、他人と共有可能にして協力していくっていうのが文明の歩みだと思うんです。

ー本質は、同じものを共有して何かを作っていくっていう、井口さんが今まで作ってきたものに共通しているんですね。

根本的な部分では、そうですね。セカイカメラは、空間にお互いの知識とか感情とか記憶を蓄積して共有しようっていう考え方だし。ウェアラブルデバイスは、近しい人がその瞬間みたものを通じて感情を交換したいっていう。見たものがその瞬間その人に伝わって、それに対しての反応が目の前に出てくる。

例えば、おいしいケーキがウェアラブルデバイスに映っているとして、目の前の彼女が「キャ~おいしそう!」って思ったら、「でしょ?」っていうのがその場で、口にもせず書くこともせずにコミュニケーションできる。

見えてるものだけでコミュニケーションができるっていう、そんなテレパシーを実現したい。

お互い仲良くしたいとか、お互いわかり合いたい、だから協力したいって人間の文明の基本的なベクトルじゃないですか。そういうのを実現するのが僕のプロダクトですね。

後編に続く・・・

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